カテゴリー「母乳育児」の記事

2015年5月20日 (水)

ツッコミどころ満載の母乳指導

母乳育児を頑張っているママさんから、「2か月健診に行ったら母乳育児に自信をなくした」とご相談を受けました。2か月健診で医師に言われた授乳のアドバイス内容を聞いてびっくり。理解不明でツッコミどころが満載。

赤ちゃんはとってもかわいい女の子。

☆生まれた時の体重 3052g

☆1カ月の体重 3840g

☆2か月の体重 4710g 

このママは、一生懸命に母乳育児を頑張っています。愛を込めて、丁寧に頑張っています。悩んだり、不安になりながらも母乳育児を頑張ってきた2か月間。24時間いつもすぐそばにいて、慈しみ、抱っこして育ててきた2か月間。

そして、迎えた2か月健診で小児科医に言われたことは…。

「母乳を飲ませていると将来骨粗鬆症になるから、ミルクを追加するように」 

「母乳で育てるとビタミン不足でくる病になるから、ミルクを追加したほうがよい」 

「母乳で育てていると生理が戻りにくくホルモン異常になるから、ミルクを追加したほうがよい」 

「母乳だけだとおなかがいっぱいにならなず赤ちゃんがひもじい思いをしてかわいそうだから、ミルクを追加したほうがよい」 

「母乳だけの子は離乳食の進みが遅いから、ミルクを追加したほうがよい」

 「先進国はミルクを使っているからミルクを追加したほうがよい」

 「お母さんが、そうとう食事の栄養に気を付けないとまともな母乳は出ないから、ミルクを追加したほうがよい」…などなど。

よくもま~あ、ここまでママのモチベーションを低下して「ミルクを飲ませたほうがよい」と勧めてくれたものだなあ…と悲しくなってきます。これらはすべて、適切ではない情報です。

母乳が足りているかを考える目安として

◆生後6カ月までの1日の体重増加は、18~30g(1週間で125g以上)

※母乳不足と考えるのは、生後6カ月になるまでは、1か月の体重増加が500g以下。あるいは生後2週間過ぎても出生体重に戻らない場合(WHO/UNICEFによる)

とされています。つまりこの女の子の発育は順調で、母乳は不足していません。とても順調な経過です。順調に育っているケースなのに、小児科医はなぜ不安にさせることを話すのだろうかと、悲しい限り。残念ながら、このような母乳育児に理解がない小児科医も少なくありません。

人間のいのちは哺乳動物として母乳を飲ませながら脈々とつながってきました。粉ミルクという商品が使われるようになったのは、まだたかだか60数年前のこと。医師が母乳育児より粉ミルクを推奨するということに、哺乳類としての偉大な力に物申す畏れ多さを感じてしまうのです。

粉ミルクが使われはじめるずっとずっとはるか太古の昔から、生まれてすぐ母乳を飲み、母乳だけを飲んで育ち、今の私たちに命がつながれている…。歴史上では、ミルクの普及とともにこのような社会問題も起こりました。哺乳類だけに与えられた「母乳育児」には、医学や知識では計り知れない奥深さがある、そんな畏敬の念を忘れないようにしたい、そう思っています。

(※2か月健診は、出産施設によっては勧められることがありますが、必須の健診ではありません。必須なのは、1か月・3~4か月・1歳半・3歳健診です)

|

2015年5月 3日 (日)

 復職後の授乳

新年度は、復職ママの多い時期。

「仕事をするか母乳を続けるか、どちらかを選択しなくてはいけない」と考えていらっしゃる方もいらっしゃいますが、「早期に復職するからこそ母乳を続けてほしい」「ママと一緒にいる時間が少なくなるなら、濃いスキンシップを続けてほしい」と、私は思っています。

授乳服のモーハウス社長光畑さんは、復職後に授乳を続けることを「授乳は母子のコミュニケーションとお母さんの休息、子供の心を満たすこと、このすべてが一度にできます」とおっしゃっています。

復職後にミルク育児をしているママに比べて、母乳育児を継続しているママの方が欠勤数が少ないという調査結果があります。また、ママが授乳しながら復職できるよう応援している企業の方が離職率が下がり雇用主の社会的信頼度が増す…など、雇用サイドのコストパフォーマンスもよくなると考えられています。

授乳しながら4月に復職したママから、うれしい連絡があったのでご紹介します。

「こんばんは。今日はどうしてもお伝えしたいことがあり、こうして連絡させて頂きました。 

ついに仕事復帰を致しました。保育園で7時半~17時半まで過ごしました。 

平日の昼間はミルクなのに、祝日は完全母乳という形も可能であることに、驚いています。先生に何度もアドバイスして頂き、本当によかったです。 

卒乳前に預けるならミルクにした方がいいと様々な情報や先輩ママの声がありました。さらに、授乳間隔があかず、寝不足になる日々の中、ミルクだったら寝てくれたのかな?と思うこともしばしばありました。 

けれど、復職し、子どもと離れる時間が延びたことで、母乳の存在に本当に感謝しました。帰宅するなり、子どもを待たせることなく、授乳ができること。

 会いたくて触れたくて仕方なかったわが子に、授乳しながらスキンシップがとれること。

 夜泣きがひどくなる中で、ミルクのように間隔を気にせず、欲しがったらすぐにくわえさせられること

 一生懸命吸うわが子が汗びっしょりになることを、自分の肌で感じられること。

 ああ、母乳諦めなくてよかった…と心底今日思えたんです。

 添い乳だから眠りが浅くなるという考え方もあるようですが、添い乳だから、私も息子とつながっていられると今は思えます。

 仕事復帰のタイミングが早かったんではないかと、正直今も悩んではいます。けれど、自分で主人と話し合った末に出した答え。 久々の仕事は、緊張しましたが、楽しかったのもまた事実です。

 息子との時間は短くなったけれど、離れている時間があるからこそ、濃密に過ごせるような気がします。母乳育児は子どもだけではなく、母親である私にも欠かせない形だと思うようになりました。 本当に先生と出会えてよかったです。ありがとうございました。」

この方は、生後数か月間赤ちゃんがうまくおっぱいを吸うことができず、何度も涙しながら頑張った経緯があります。お子さんは、とってもかわいい男の子。復職前には「授乳と仕事を両立できるよ」と伝えても半信半疑だったようですが、実際はとても上手に両立していらっしゃいます。

ただ、復職する前の授乳回数やお子さんの月齢によっては、復職2か月くらい前から授乳をコントロールするためのおっぱいケアを受けたほうがよいこともあります。特に乳腺炎になりやすい方は事前に助産師へのご相談をお勧めします。

もしGWで断乳を考えているママがいらしたら、この記事もご参考になると思います。

|

2015年4月17日 (金)

「〇〇べき」だらけの母乳育児は面倒くさい

母乳育児は、「頑張らなくてはならない」ものではなく、本来「心地よくて気持ちいこと」であってほしい。

赤ちゃんが「欲しがるタイミング」と「ママの飲ませたいタイミング」が一致し、まるでママと赤ちゃんが連動しているかのような、一体感を得られる幸せな時間…。

この母乳育児は「頭」で考えすぎるとどんどん難しくなってしまいます。「〇〇べき」「〇〇はダメ」が増えれば増えるほどストレスフルに。

今日お会いしたママさんも、母乳育児の「〇〇べき」にがんじがらめになっていらっしゃいました。

お会いする前にいただいたご予約メールには、「母乳育児がストレスです!」という叫びが聞こえてきそうな長文。「何も考えずにおいしいものが食べたい」「知り合いが楽しそうにランチしているのが羨ましくて」「母乳育児が楽しくなく、恐怖でしかありません」…!!!

どうやら〇〇式の母乳ケアで、たくさんの「〇〇べき」「〇〇はダメ」の指導を受け、まじめに守っていたんだとか(それも、10回も通ったらしい)。

その指導内容を聞いて、びっくり!

「牛肉・豚肉はダメ、肉は鳥ササミにするべき」

「寿司はダメ、寿司酢は砂糖が入っているから控えるべき」

「刺身は赤身はダメ、食べたいなら白身にするべき」

「肉も魚も、高級品は脂肪が多いからダメ」

「甘いお菓子は一切ダメ、食べたかったら芋類にするべき」

「パンはダメ、お米を食べるべき」

「おっぱいが張るから、入浴は肩まで入ったらダメ」

…まだまだたくさん。

はあ~、聞いているだけでくらくらする。私なら無理。

こんなに「〇〇べき」「○○はダメ」が多かったら、いったい何を食べたらいいの?赤ちゃんとの慣れない生活の中で、食べていいものを探して献立を考えるのは…面倒くさい(笑)

おまけに、「〇〇べき」を全部守っているのに、乳首の痛みやしこりが治っていないし、母乳育児の不安も解決していないらしい(10回も通ったのに)。そりゃあ、母乳育児がストレスになるだろうなあ。

このようなストイックな食事指導には、エビデンス(科学的根拠)があるのかどうかすら分からないといわれています。この方も、まじめに守っているのにおっぱいトラブルだらけ。

「食べたい!」「ランチしたい!」を我慢して、母乳育児のことだけを考えて育児をするのはつまらない。授乳中の食事は「できたらこっちの方がいいかもね」くらいの考えでよいと私は思います。

こちらのコラムにも、母乳育児の食事について詳しく書いています。参考にしてくださいね。赤ちゃんの部屋

4d4a6380

|

2015年4月15日 (水)

授乳中のくすり 

内科や外科などでお薬を処方されるとき「飲んだ薬が赤ちゃんに影響するから、しばらく母乳をやめてください」と言われることがあります。

しかし 実は、母乳に移行するのはママが飲んだ量の1%程度。体重が少なく生まれた赤ちゃんは影響することもありますが(体の中で薬を処理する力が弱いため)、これは生まれた直後の話。体重が増えれば薬の影響は少なくなり、離乳食が始まる頃にはほとんど影響しなくなります。

お薬を処方されるときには「母乳育児を続けたい」とママの意思を医師に伝えることで、赤ちゃんに影響の少ない薬を選んでくださるはずです。もし「授乳中に安全な薬はないから授乳をやめるように」と、母乳に無理解な医師であれば病院を変えた方がいいかもしれません。

母乳と薬の研究をしている医師の著書によると、「ほとんどの医薬品添付文書では授乳を中止するよう書かれているが、近年多くの薬剤は母乳中に移行はするがその影響はごくわずかなものだと分かってきた」とのこと。

お薬を処方されたときに、ママも調べられるようにしておくとさらに安心です。相談先は以下を参考にどうぞ。

★国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」 : 03-5494-7845(平日10~12:00と13:00~16:00)

★Motherisk Helpline : +1-877-439-2744 (相談無料ですが、英語のみ)

大分県医師会作成「母乳と薬ハンドブック」  

LactMed : 英文ホームページですが、薬剤名を入力して検索できます。

Photo

|

2015年2月 8日 (日)

パパは母乳育児を理論で考えやすい

「人生で初めて新生児と出会ったのはわが子だった」男性は全体の約70%。そして、男性は理論的思考で、女性は情緒的思考が多いといわれています。あくまで一般論なので個別性はあると思いますが…。

そして「母乳育児」とは、知識があり理論で考えたらうまくいくものではなく、「体の感覚」「なんとなくこんな感じ」をつかむとうまくいくことが多いように思います。

しかし、混合栄養から母乳栄養に移行するときや、母乳育児がうまくいっていないと感じているときは、つい理論で考えてしまいがち。赤ちゃんがよく泣くことや、体重の増え方や、母乳の分泌量が思うように増えないように感じて不安を感じるママが多いのが現状です。

このときに、ママの場合は母乳を吸われる「感覚」も体験しますが、パパの場合はこの「現象」だけに直面するため、さらに理論で解決しようとする傾向があります。

たとえば、今までパパからこんな質問を受けたことがあります。「栄養学的には何分吸わせるのが正解なのか」「何分吸ったらおっぱいは空になるのか」「体重の増加は平均値がどのくらいで、わが子の出生体重から算出したらどのくらいなのか」などなど。

ママに向かって、 「わからないんだから聞いているんだろ」「自分の子がおなかをすかしているから心配しているだけだ」…。ついには、「本当に大丈夫なのか」「栄養が足りていなくて何かあったらどうするんだ」と妻に質問責めをして、夫婦喧嘩に発展してしまうこともあるらしい…。初めての経験で分からないどうしのパパとママが話し合っても、安心して納得する解決につながることは難しい。ますます不安が増すばかりになってしまう…。

育児の中でも、特に母乳育児はパパは変わることができません。体験しているママが不安を感じているときに、パパは理論ではなく「頑張っているママをそのまままるごと受け止めて支えてあげてほしいな」と思うのです。たとえば、「泣いているけれど母乳が足りないのかしら」と心配するママに、「〇〇だから足りない可能性がある」「ネットにはこう書いてある」という理論よりも、「大丈夫だと思うよ~」「俺の子だからたくさん飲むんだろうなあ~ハハハ」「おいしいものをたくさん食べろよ。そうしたら母乳がたくさん出るといいなあ~」などなど…。ママを緩めてあげてほしいと思うのです。

人間だれしも、「一度も見たこともない」「体験したことがない」(つまり、パパにとっての母乳育児や赤ちゃんとの生活)について、理論で解決することはとっても困難なのではないでしょうか。

男性が母乳育児を理論で解決しようとすることについて、こんなたとえ話をすることがあります。それは…、一輪車。

乗れる人は大勢いるけれど、まわりに乗っている人はいない。乗る感覚はよくわからないけれど、見ているだけなら簡単そうにも見える。自分は一度も乗ったことはないし、乗り方もわからない。乗り方を教えてあげようと、「軸足は…」「加速するときの力の入れ方は…」「バランスをとる体の位置は…」と理論を頑張ってつたえても実際に乗るのは自分ではないからよくわからない。体験しながら、「体の感覚」「なんとなくこんな感じ」をつかむとうまくいくだろうけれど、一度も一輪車に乗ったことがない人がその感覚を伝えることはとっても困難。ついつい理論を教えようとしてしまう…。

パパが母乳育児を心配するときの心理はこんな感じではないでしょうか。

ママが母乳育児に自信をなくしそうになっているときに、パパががんばって理論を教えたらうまくいくものではないのでは…と、私は思うのです。

しかし、実際は…頑張りすぎて理論でママを追い詰めちゃうパパさんが、意外にも多いんです。

パパさんにはまず、「ママを緩ませる」ことを優先してほしい。女性は情緒的思考する人が多く、「共感」し「安心」することでリラックスできます。そのように緩ませてもらうことが、より安心して幸せな母乳育児につながるのではないかな…と、私は思っています。

あ、私はついママの立場で考えてしまうので、パパさんがお気を悪くしたらごめんなさい(>_<)

|

2014年12月26日 (金)

4ヶ月健診で自信をなくしそうなママへ

赤ちゃんが順調に成長しているかを確認する乳児健診。出産した産院で1ヶ月健診を受け、住んでいる市町村の保健所か小児科で4カ月(または3カ月)健診を受けるのが一般的です。これは全国どこに住んでいても同じ。

乳児健診では、身体測定と触診が行われます。医師は「病気はないか」「発達に遅れや異常はないか」と、赤ちゃんの体を丁寧に診察してくれます。そして時に、体重の増加が少なめの時には授乳についてのアドバイスを受けることもあります。

具体的には、以下のようなこと。これらはすべて、実際に4カ月健診の際に小児科医から言われたことばです。

「おっぱいは何分あげてるの?(長く吸うのは)出てないからじゃない?かわいそうだよ」

「低栄養で脳に影響が出るからミルクを追加して」

「初乳は免疫を含んでいるけれど、4カ月にもなったら母乳とミルクの栄養価は全く同じだから飲ませる意味がないから(ミルクにしたら?)」

「母乳を飲ませたいのはお母さんのエゴ。子どもがかわいそうだよ」…などなど。

かわいいわが子の成長を確認する健診で、こんなことを医師から言われたら泣きたくなる。母乳をやめてお腹一杯ミルクを飲ませたくなるかもしれません。

まず、「小児科医=母乳の専門家」ではありません。医学部で「母乳学」は学びません。小児科医の中には、母乳について学び日々研鑽している医師もいます。素晴らしい先生方も大勢いらっしゃいます。しかし、「すべての小児科医=母乳育児に詳しい」わけではないのです。

母乳が足りているかどうかを判断するのは、赤ちゃんの体重だけではありません。母乳の分泌状態、赤ちゃんの吸い方、飲ませるタイミングなどなど(まだ他にたくさん)。つまり、健診で赤ちゃんの体重だけを見て「母乳が足りない」と診断することはできないのです。

体重が少ないから脳が低栄養になるという根拠は全くないし、母乳のメリットは「免疫がある」だけではありません。母乳を飲ませたいのは哺乳類の本能であり、赤ちゃんサイドも飲む権利がある。「かわいそう」という表現自体が大変失礼です。

WHOは、母乳だけで育つ赤ちゃんの体重増加について以下をあげています。

★生後6カ月頃までは1日の体重増加は18~30g

★1週間の体重増加は125g以上

★生後5~6カ月で出生体重の2倍、1年で3倍

たとえば、2700gで生まれた赤ちゃんが4ヶ月検診で5600gだった場合。4カ月の平均体重よりは小さくても、上記を満たしていれば発育良好と判断します。

母乳育児に関心の高い小児科医の方の場合、体重が少なければ「助産師さんに相談してね」と言ってくださることが多いです。しかし、母乳育児に関心がない小児科医の多くは「母乳不足」「ミルクを追加したら体重が増える」と短絡的に考えてしまうことが残念です。

ミルクをお腹一杯飲ませれば体重は増えますが、体重を増やせば健康というわけではありません。ぶくぶく太らせるだけならば、それはまるで飼育。

毎日毎日大切な赤ちゃんを抱っこし、おっぱいを飲ませ、夜中に睡眠不足になりながらも、愛を注ぎ続けた4カ月。健診では「不足している点を見つける」のではなく、「4カ月間よく頑張りましたね」というねぎらいの場であってほしいと願っています。

|

2014年10月11日 (土)

授乳中のたばこ

20~50代全女性の喫煙率は9%。女性の10人に1人が喫煙者です。中には妊娠しても禁煙できず、吸い続ける妊婦さんもいます。

妊娠中・授乳中の「たばこ」がよくないことは周知の事実。「なぜ」よくないのか。

妊娠中は羊水の中で育つので、ニコチンが羊水に入ったら24時間ずっとそのまま。おしっこやウンチで胎外に排出することができません。よって血液循環が悪くなり、低体重で生まれる子が多くなります。また早期破水や胎盤早期剥離や前期胎盤が増えます。つまり、大きく育つことができず、かつ自然な安産で生まれることが難しくなるということです。

そして、妊娠中にママがたばこを吸っていた場合、生まれた後もリスクがついてきます。「乳児突然死症候群(SIDS)」の確率がぐっと増えます。SIDSは、生後3カ月頃に何の前触れもなく赤ちゃんの呼吸が止まって死んでしまう病気。この恐ろしい病気のリスクが5倍以上に増えるのです。

妊娠中にたばこを吸っていて良いことはひとつもありません。妊娠が分かったらすぐにやめたほうがいい。せめて、つわりが始まったらすぐに…。しかし「そんなことは百も承知だけれど、どうしてもやめられない」妊婦さんもいるのが現状です。

妊娠中にたばこを吸っていたママは、出産後に「たばこを吸い続けたいから母乳は飲ませない」と考える方がほとんど。妊娠中はなにひとつ良いことはないたばこ。でも実は、産後は少し状況が変わります。

ママがたばこを吸うという理由で「母乳をやめたケース」と「続けたケース」を比べると、「母乳をやめたケース」の方が、気管支炎や上気動炎のリスクが高くなるのです。母乳をやめることで、呼吸器系疾患のリスクが3~8倍に上昇することが分かってきました。

アメリカ小児科学会は、「ニコチン(喫煙)は母乳育児に禁忌ではない」と発表しています。たとえ喫煙していても母乳育児を続ける方が、ミルクで育てるより恩恵が大きいということが理由です。

母乳の中には多種類の感染防御因子(赤ちゃんを感染症から守る細胞など)が含まれています。母乳をやめてしまうと、赤ちゃんはこの免疫をもらうことができません。この免疫物質は、ニコチンのリスクとは比べ物にならないくらい素晴らしいものなのです。

そして「おっぱいを吸う」ことは、赤ちゃんにとっての権利のひとつでもあります。ママのおっぱいに触れて安心したい、温かくてやわらかいおっぱいを吸いたい、という思いは赤ちゃんの本能。

もちろん、たばこを吸っているママの母乳は、吸っていない母乳に比べたら質は劣ります。さらには分泌量も低下します。たばこを吸わない方が赤ちゃんに良いのは当たり前。でも、「たばこを吸いたいから母乳は飲ませない」のではなく、「禁煙できないならせめて母乳で」と考えたほうがよいようです。

|

2014年7月20日 (日)

フォローアップミルクは必要?

子育て広場に集っていたママからお電話がありました。

「実はちょっともめていて…。フォローアップミルクを飲ませたほうがいいのでしょうか。某ミルク会社の人に、フォローアップミルクを飲ませないと病気になると言われたママがいたので、みんなで心配しているんです」

さら助産院でかかわっている赤ちゃんたちは母乳オンリーっ子が多いから、ミルク会社の人に「病気になる」と言われたら不安になるのは当然だと思います。

結論から書くと、フォローアップミルクは必要ありません。

2007年の「授乳と離乳の支援ガイド」には、「フォローアップミルクは母乳や育児用ミルクの代用品ではない」と明言されています。

フォローアップミルクは「育児用調乳粉乳」であって、普通の育児用ミルクとは違います。そのため、細菌数や原材料、容器包装についても人工乳が守るべき規格は用いられていないくらいです。

フォローアップミルクは牛乳に近く、たんぱく質やカルシウムも多すぎ、赤ちゃんには負担になるとさえ考えられています。母乳を飲んで離乳食を食べていたら、赤ちゃんは栄養不足にならないし、ましてや病気になりやすいなんてことはないのです。

小児科医の栄養専門家の集まりである「日本栄養消化器病学会乳児栄養委員会」は、「フォローアップを必要とする理由はない」と宣言しています。

さらに、

「フォローアップミルクが勧められるようになってきた背景には、乳児死亡率・罹患率の低下などから我々小児科医の乳児栄養に対する関心が薄れた間隙に生じたことで、その意味では我々小児科医自身も反省が必要である」とまで発言しています。

周りの人に「飲ませるべき」と言われると不安になるけれど、必要のない栄養を補給するのは赤ちゃんにとって負担かもしれません。「いらないらしいよ~」と答えられるくらいの余裕で、母乳育児を楽しんでくださいね。

※参考 : 日本栄養消化器病学会乳児栄養委員会「フォローアップミルクの意義に関する理事会諮問」日本小児科学会雑誌’94 :1316-1317(1990) 

|

2014年7月15日 (火)

コラム執筆はじめます

大手育児情報サイト「赤ちゃんの部屋」の母乳育児ページで、コラム執筆がはじまりました。

実はこのサイトが立ち上がる数年前にもご依頼をいただき、その時はお受けできなかった経緯があるのですが、その後も代表の方がず~っと私のブログを読んでくださっていたそうです。
ありがたいメッセージをいただき、そのお気持ちが嬉しくてお受けさせていただきました。

人とのご縁で一番嬉しいことは、「私を必要」と思ってくれるお気持ち。

ご期待にこたえられるように頑張ります。更新できるか不安もありますが…。

赤ちゃんの部屋」は、現在「妊娠・出産・育児サイト」で上位にランキングしている情報サイトで、役立つ情報が満載です。ぜひご覧いただけたら嬉しいです。

|

2014年6月27日 (金)

母乳相談で切なくなること

母乳支援にかかわる者として、毎日いろんな方に会います。嬉しいこと、がっくりくること、いろんな事があります。そんな思いをつらつらと書いてみます。長文ブログ記事なので、母乳育児に関心のある方に読んでもらえたら嬉しいです。

母として「母乳育児でわが子を育てたい」という思いは、理屈ではなく哺乳類としての本能。私は「母乳はよくてミルクはよくない」とか、そんなことは全く思っていません。

ただ、粉ミルクというものを日本人が使うようになってから、まだ100年もたっていない。粉ミルクというものが使われるようになるずっとずっと前から、人間は命がつながり母乳で育ててきたという当たり前の人類の歴史を思うと、「本当にそんなにミルクが必要なのだろうか?」と疑問に思うことは多々あります。

多くの母親の願いは「我が子におっぱいを飲ませたい」「母乳をもっと出るようにしたい」ということ。そんな「母乳の出をよくする」ためにできることは、まずは「よく吸わせること」が基本中の基本です。特に生まれて間もないうちは、「このくらいの母乳量を赤ちゃんが必要としています」とおっぱいホルモンに記憶させることが重要。そのためにも、何度も何度も吸わせればよく出るようになります。そのママの持っている力の最大限に。

しかし現状としてよく陥りやすいケースは、

産院の入院中に当たり前のようにミルクを追加することを教わった(から、ミルクは追加しなくてはいけないものだと思っているママが多い) ➔ ミルクを追加しているから母乳を吸わせる回数が減る ➔ 吸わせる回数が減るから母乳の生産量が少なくなる ➔ 母乳の出が悪い(とママは思っている)からミルクを飲ませる ➔ 授乳回数が少なくて母乳分泌がさらに減る ➔ 母乳の出が悪いとママが確信する ➔ ミルク量がどんどん増える ➔ミルクでおなかいっぱいになった赤ちゃんは母乳を吸おうとしない ➔ 赤ちゃんが吸ってくれないのは母乳が出ないからだとママは思ってしまう ➔ どんどん母乳を飲ませる回数が減る ➔ 本当に母乳の分泌が減少する …という流れ。

毎日毎回多量にミルクを飲ませ続けていたら、おっぱいホルモンに「母乳を作る必要はありませんよ」と教えているようなもの。だから、1ヶ月半~2カ月くらいでおっぱいホルモンが減少してしまい、本当に出ないおっぱいになっていくのです。

つまり、1ヶ月半くらいまでに「上手な吸わせ方」をきちんと習得してもらえたなら、母乳の分泌が安定して母乳育児がうまくいくことが多いのです。この時期に、ママに上手に飲ませるコツを覚えてもらって、赤ちゃんが上手に吸えるようにアドバイスすることが、母乳支援をする者にとって大切なことだと考えています。

特に、ミルクを多量に追加していた方が母乳中心に変えて行く場合、途中経過が肝心です。一時的に体重が増えないことや、一時的に便秘になることもある。赤ちゃんが常におなかをすかせて「全力で必死に」おっぱいを吸い続けることで、おっぱいホルモンが焦って作り始めます。ミルク栄養から母乳への切り替えの場合、この一時的な過程で心配になるママが多い。そのため経過の確認は必ずさせてもらっています。

しかし時としてこの過程の途中で、産科や小児科の受診のタイミングになることがあります。一時的に体重の伸びが少ないこのタイミングで、「母乳が出ていない」とか、「母乳では難しいね」といわれてしまうととても切なくなります。一時的な通過「点」ではなく、成長の過程を「線」で見守ってもらいたい。この期間は、ひたすら「大丈夫だよ」「このまま頑張ったらうまくいくよ」とアドバイスしてあげてほしいのです。

残念なことに、モチベーションが低下する発言を受けた場合、心配している状況だからこそママたちの不安が増して「やっぱり母乳では無理なんだ」とあきらめてしまう人もいます。母乳育児が無理かどうかは、少なくても1ヶ月半くらい母乳中心の育児をしてみてから考えることであって、1ヶ月検診やその前後で判断できることではないのです。

おもにミルク栄養が中心だったママにも多く関わってきましたが、この生後1~2カ月までに上手な飲ませ方のコツをつかんで経過の確認を受けつつ頑張ったママは、ほぼ例外なく満足な母乳育児ができるようになっていると思います。

もし産科や小児科に受診したときに、「母乳が足りない」「母乳では無理」とモチベーションが下がることを言われたら、ぜひセカンドオピニオンを探してほしい。複数の医師や助産師にいろんな意見を聞いて迷ったときには、「できるよ」「大丈夫だよ」と励ましてくれる人の言葉を信じてほしいのです。

哺乳類としての本能である母乳育児。私は決して「母乳がよくてミルクが悪い」とは思っていません。けれど、粉ミルクというものが使われるようになるずっとずっと以前から、人間は命がつながり母乳で育ててきたのです。そんな母乳を飲むことで、赤ちゃんはママの免疫をもらい感染症になりにくく、ママも乳癌や卵巣癌のリスクが減るなど、自然に体を守るようにできているのです。

せめて生後1~2カ月は、たとえ不安な状況であっても「母乳が出ない」と確信することなく、自分の母としての体の力を信じてほしい。健康な女性であれば、出産したら母乳が出るように体はできています。母乳が足りていないように感じて不安なときには、成長の過程を線で見守ってくれる医師や助産師のケアを受けて、ママの体の力を引きだし発揮してほしい。そう願っています。

|

より以前の記事一覧