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2012年10月 9日 (火)

人生で一番つらいとき

三砂ちづるさんの著書「タッチハンガー」の中で、「人生で一番つらいとき」という章がありました。

なんだか吸い込まれるように読んでいると、それは「現在」のつらさを指した内容ではありませんでした。「赤ちゃんの気持ち」を代弁しているかのような内容の一部をご紹介します。

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大変な毎日を過ごしておられる方も多いでしょう。今が人生で一番つらい時だなと思うような時間を過ごしておられる方もあるかもしれない。そういう方もあるだろうに何をいまさらを思われるかもしれませんが、人生、幼い時ほどつらいのではないかと思います。

(中略)

社会人になったら、本当にいやなことはやらなくてもよくなりました。そんなバカな、社会人になったらつらくても耐えなければいけないことは多いし、勝手なことは言ってられないし、やりたくないこともやらなければならないのだとおっしゃる方もあるかもしれない。

でも社会人になったあなたは、理不尽なことに抵抗するやり方は、できるできないは別にして知ってはいるし、お金のためと思えば我慢の仕方も工夫できるし、最後には「やめる」という手段もあります。家族関係で、お金のことで、大変かもしれない。でもそれを大変と認識できるほどにはすでに大人なのです。

人生は、年を重ねるほどにラクになる。大人になるほど、責任も増えるけれど裁量の幅も増える。少しずつ自らを知り他人を知り世界を知ることは楽しいこと…ということを若い人に伝えたい。

そう思えば、人生で一番大変なのは生まれてきたばかりのころなのです。赤ん坊のあなたは何もかも分かっているというのに、周囲はあなたのことなど何も理解しようとしない。みんな、あなたは何も分かっていないと思っているし、見えていないと思っているし、聞こえていないと思っている。

産道を通ってきて、ああ大変だったと思っているのに、煌煌たるライトにあてられ、知らない人に引っ張り出され、鼻を管で吸われ、苦しくてぎゃあぎゃあ泣いてしまいます。お母さんのにおいのするところにいたいのに、お母さんから離されて、一人のベッドに入れられます。お母さんのおっぱいがいいのに、ゴムの乳首をくわえさせられます。

どうせ赤ちゃんだから分からないわよ、と周囲は思う。あなたは抵抗できず表現できない。なんてもどかしいのでしょう。人生で一番大変なのは、やはり幼い時、赤ちゃんのころなのだと思います。

私たちは本当に幼いころのことは覚えていない。幼いころ、自分の意思を通じさせることができないことがどんないつらいか、私たちは忘れてしまいます。覚えていかなくてはならないことがたくさんあるから。でも、とてもつらい時期なんだと思えば、赤ちゃんにどのように接すればいいのかおのずと決まってくるように思います。

幼い人にほど丁寧に接していたい。ゆったりした気持ちで、優しい手でそっと触れていたい。穏やかな声で語りかけていたい。しっかり抱きしめて、あなたのことを分かっているよ、と言ってあげたい。大丈夫大丈夫、と語りかけてやりたい。

言葉で説明できないってつらいよね、言葉で説明できないから泣きたくなるんだよね、と泣いている子に寄り添ってあげたい。言葉が話せるようになった子の話は、ないがしろにしないで丁寧に聞いてあげよう。たくさんたくさんの思いが、一言に込められているはずだから。

「タッチハンガー」三砂ちづる著 P208~より一部引用

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一字一字、本を見ながらブログに転記していたら涙が止まらなくなってしまいました。

こんなことを思い出したから…。

先日、「寝かせてすぐに寝ついてくれないと大変になるから、毎日言い聞かせて『しつけ』をしたら寝るようになりました。諦めて一人で寝てくれるので、ラクです」と、自身の育児を誇るように話していた生後2か月のママと出会い、伝える表現を見つけられなかったことを。

また、「飲み会に行きたいし、乱れた食生活を変えたくないし、ストレスを感じたくないので、母乳を吸わせるのはイヤです」と強く切望するママとの関わり方に戸惑い、結局なにも意見が言えなかったことを。

そして、私自身の育児を振り返り、わが子の気持ちより自身の気持ちが優先してしまうことがあった、当時の余裕のなかった自分自身のことを…。

大人は、思いを言葉にして表現することができる。「早く眠ってほしい」「泣かないでほしい」「たまには休みたい」「ひとりになりたい」「ストレス解消したい」と。

でも、赤ちゃんはただ泣くしか表現できない。「そばにいてほしい」「抱っこでつつみこんでほしい」「母乳が出なくてもいいから、あたたかくてやわらかい乳首にふれていたい」…。もしかしたらそう表現したいのかもしれない。

言葉にならない泣き声は、なにを表現しようとしているのだろう…。赤ちゃんの気持ちを一緒に考えながら寄り添える助産師でありたい、そう思う。

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