医療者のことば
Mちゃんのママから、切なくなるお電話がかかってきました。
Mちゃんは、生後25日で1ヶ月健診を受けました。
ママは「母乳で育てたい」と熱心に取り組み、退院直後はにじむ程度だった母乳が今では噴水のようによく出ます。Mちゃんは、生まれてしばらく黄疸が続いていて、生後2週間ほどは体重の伸びが少なめでした。
でも、母乳はよく出ているし、Mちゃんは顎の力もあり上手に飲めるし、「ゆっくり増えていく子だろうね」とママと話していて、私はなにも心配していませんでした。
しかし、1ヶ月健診を受けたあと、こんなお電話がありました。
小児科医に「この子は栄養を与えられていない。親としてどうなの?」「2週間後にもう1回来て。来なければ児童相談所に連絡することもあるから」と言われたそうです。
1ヶ月健診の体重増加が少ないかは、「1日あたりの体重増加」で判断するのが一般的です。退院(もしくは生理的体重減少で体重が最も減った日)から1ヶ月健診までの体重を日割り計算し、25g~30g増えてたらOK。Mちゃんは25gの増加です。
よく、「1ヶ月健診で1kgの増加」と言われますが、これは「おおよそ1日あたり30gぐらい増えたら1ヶ月で1kgくらい」という考えに基づいています。「1kg増えなければ異常」ではありません。
大切に大切にかわいいわが子を育ててきて、健診でお医者さんにこのように言われると本当に自信をなくしてしまう。過去に出会った方で、「この子は低栄養」「こんな枯れたおっぱいではかわいそう」「母乳育児はママのエゴ」と言われた方もいらっしゃいました。
「体重増加が少ない」=「母乳が出ていない」とは限りません。そして、母乳不足かどうかはおっぱいを見ないと判断できないはず。体重だけを見て「母乳が足りない」とは言えないと思うのですが。
体重増加について、IBCLC(国際認定ラクテーションコンサルタント)によると、
生後2カ月までは、1週間で125g、1ヶ月で500g増加していたら母乳が足りていると判断する。体重だけではなく、手足の動きや表情、またおしっこの回数が一日6回以上あるかなどをみて母乳が足りているかを判断する。
とされています。ということは、Mちゃんの状況は決して深刻ではありません。でも「児童相談所に連絡」なんて聞くと、危機的状況に感じてしまいます。
もちろん、小児科を受診するママの中には無知な人もいるだろうし、虐待の早期発見もしなくてはいけない。厳しく言わなくてはいけない医師の立場も理解できる。
ただ、「数字だけではなくて、ママがどんな人かを見て!」と思う。熱心なママなのか、無知なママなのか。育児に一生懸命に取り組んでいるママなら、わが子のことをきちんと見ているのに。それこそ、母乳の回数やウンチだけではなく、ささいな表情の変化や呼吸やお肌やにおいまで。
医療従事者の言葉は、育児に自信がもてるような言葉であってほしい。私も自分の言葉を振り返りつつ、肝に銘じて気をつけたいと思います。
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